2013年11月25日月曜日

古いきおく

ウォーキングをしながら色んな事を考える。
考えることは思い出す事に繋がったりする。
自身の二面性の果たして如何なものかこの性質は幼少の頃からだったか
などとむにゃむにゃ考えて
記憶をさぐりさぐりしていたら一番古い記憶が何だったか思い出した。
初めて思い出したわけではなく憶えていてたまにふっと思い出す記憶なのだけど

寝小便で夜中にこっそりベッドから抜け出した(常習的に)それより前

どういう事情かうちは何十回も町内で引っ越したが、
恐らくあれは私が初めて住んだ父が作ったトタン屋根の家、兼店、のうしろ隣にあった今は亡き祖母の家。

ふかふかの中で目覚めて真っ暗。
ふかふかはふとんらしい。
暗くてひとりで狭くて怖くてぎゃあぎゃあ泣いた。
すると
重い引き戸(なので祖母の家と思われる)をずずと開けて女の人が現れた。
笑っていたように思う
その後のきおくはとても曖昧で憶えていないのだけど
おそらくその人は私を抱っこしてあやしたのだろう。
その人はおそらく母なのだろう。

思春期の頃の母は忙しくて怖い印象しか無かったけど

よかったね、ものわすれが激しいくせに、
いちばんふるい記憶がそんなのでよかったね。
 

2013年11月6日水曜日

高安イクミ個展「東京画」無事終了しました

10月29日から11月4日まで。
場所は沖縄県立博物館・美術館 県民ギャラリー3
期間中は晴れたり雨だったり。涼しいと思ったら暑くなったり女心と秋の空という感じでした。

「東京画 イントロダクション」

且つて映画監督ヴィム・ヴェンダースが、東京に訪れた際にパチンコ屋や、レストランのショーケースに展示する料理の見本を作る工場を延々と撮った映画がある。
「東京画」というタイトルのその映画をいつかの深夜に見た。
そこから頂戴した本展示会のタイトルであります。
今回県民ギャラリーで個展をすることが決まった時に「とにかくでかいものを描く」というのが目的で、モチーフに選んだのが去年行った東京旅行の思い出でした。
県外の都市で暮らした経験がありますが、やはり東京の雰囲気は地方都市とは違う何か強烈なパワーを感じます。
それはキラキラしていたり重くどんよりしていたり色んな物がまぜこぜになった不思議なパワーです。
初めて一人で計画して行動して挑んだ東京は、想像以上に楽しく、そして辛くもありました。
だから東京讃歌ではなくネガティブなイメージも織り交ぜてます。
何でも受け入れる土台のある東京。でもちょっと気を緩ませると孤独を感じる東京。
憧れと怖さがまぜこぜになった不思議な街です。
私は2012年に二回東京へ旅行に行き、二度目の時初めてホームシックというものになりました。今まで一度もそんなものになったことはなかったのに。
でも、今また東京に行きたいのです。
今度は以前と違う私になって。


作品

「秋葉原ピース」
駅から出たら超有名アイドルグループのショップがあって「わあここで歌ったり踊ったりしているのかあ」と勘違いしたお上りさんがピースしているさまです(AKB劇場は別の場所だと後で知りました)。
  電車がガンガン走ってる(現実)とアイドルショップ(夢)が一緒の画角に収まっているのが愉快だなあと思いました。この絵の主役はうろうろしている男性達の後ろ姿。だからピースしているおのぼりさんは失敗した写真のように半分に切れています。
「ホテルぐらし」
とても狭いけど清潔な部屋に一週間くらい居ました。
  家に居る時はテレビをほとんど見ないのに、ホテルではテレビをつけっぱなしでした。パソコンも音楽も無く寂しかったのでしょう。
  沖縄では飲めない「明治 おいしい牛乳」が大好きでここぞとばかり毎日飲んでました。お陰でお腹がゆるくて困ることに。

「さむざむしい、しらじらしい」
  とても寒い夜に込み入った住宅街をうろついていました。
  壁にはたくさんの選挙ポスター。その反対側では飲み屋でおじさんたちがのんだくれています。
  よくわからないやりきれなさをかんじました。

「井の頭公園スマイル」
紅葉!紅葉!紅葉!北欧みたいな見た事無い木々!湖!
  広い公園にはアマチュアカメラマンがいっぱい。恋人や家族連れもいっぱい。
  とっても天気が良くて、浮かれました。大好きな場所です。
 
 ※(解説補足)
  見ていて一抹の悲しさというか寂しさを感じる方もいらっしゃると思います。
  影の様に描かれた人物達は、様々な人々の人生を現しています。つまり人生の縮図的な。
  描いているうちに、天空の母子は聖母マリアのようになり、全体的に宗教画っぽくなりました。
  イクミ流曼荼羅(?)か。

 「大江戸線ダンジョン」
東京は満員電車が大変。とはよく聞きますが、駅の構内が大変、とはあまり聞きません。駅構内大変です。六本木ヒルズに行く為に大江戸線に乗った時は、構内が迷路の様でいつになったら地上に出られるのか不安でたまりませんでした。
  地元の人でも慣れないときついらしいです。それでも新宿駅の洗礼をまだ受けていないので偉そうな事は云えません(あまりチャレンジしたくもありませんが)。
 

「窓からの景色」
  泊まっていたホテルの窓からは夜になると
  ソープランド
  のネオンが誇らしげ(?)見えました。堂々としすぎて愉快だなあと思いました。

     
「渋谷渓谷」
私は、私はとあるミニシアターに行きたかった。
  でも地図を忘れてしまった。
  スクランブル交差点で見た事の無い人ごみにもまれ
  道玄坂をこわごわと歩き
  さむさと空腹に堪えかねて、
  私はファミリーレストランでしょんぼりとチーズドリアを食べて暖を取って帰ったのでした。
  ビルの谷間は渓谷の様で、遭難しかかった人の気持ちになりました。
 
「東京スカイツリー」
  行きませんでした。
  でも帰りの飛行機で東京の街を見下ろした時に、つんっと飛び出したスカイツリーが見えました。つまめそうなほど小さいスカイツリーがちょっとしたプレゼントのように思えました。
  いつか行きたいです。


展示場


前回の個展からわずか一ヶ月で今回の個展を考えました。
創作意欲が有り余っていました。
「大きい物が描きたい!大きな場所で展示をしたい!」という欲求が爆発寸前で、
場所は県民ギャラリー以外思いつきませんでした。
7月末に問い合わせたら丁度文化の日をはさんだ連休期間にぽかっと空きが出たとのことで
幸運にも良い時期に展示させて頂く事になりました。

作品「井の頭公園スマイル」は、縦2メートル、横5.5メートルという大作。
大学の時でも100号以上描いた事はありませんでした。
とにかく、見る人を驚かせたかった。
日常とはちがう「空間」を作りたかった。

制作場所を確保する、キャンバスをロールで買う、アクリル絵の具で描く、
展示の仕方を悩む、搬入搬出の仕方を考える、
訊ねる、相談する、お願いする、助けてもらう。
そして展示期間中は沢山の沢山の方々とお会いしてご意見ご感想を頂戴しました。
長い間観覧してにこにこしながら出て来て「おもしろかったです。また展示会してください」と仰って二度も見に来た方も居れば、
「わからない」と仰る方も居ました。
下卑た質問責めをしてくる方もいました。
観覧者数600人を超えると、それは色んな方が居て当然です。
表現すれば批評がついてくるのが当たり前。
それを聞きたくて展示をする訳ですから、すべて肥やしです。宝です。
経験自体が宝物。

作品解説がおもしろいね、と多くの方が仰っていました。
確かに、今回も前回も、自分の経験や思い出を描いたもので
言葉も重要なファクターになっているとおもいますが、解説を全く読まないで絵を見ただけで印象を受ける方もいらっしゃるので
解説無しで楽しめる絵を描くのがこれからの課題だなあと思います。 

あと、前回との表現の仕方が違って驚いていた方も居ます。
前回の個展「きおくのおく」の時は、ぼんやりとした、割と抽象的な描きかたをしていたけど
今回はそのものズバリ、モチーフを画面いっぱいに色もパッキリ、といった感じ。
「なぜ?」と訊かれて
なんでか?と思ったら
東京の「俗っぽさ」を表現したいからなのでした。
東京の「俗」を「ユーモア」と「アイロニー」と「切なさ」を織り交ぜて描きました。
今回も楽しく描きましたよ(ちょっぴり苦悩もあったけど)。
次はどんな作風になっているのだろう。
作風の振れ幅が広くてこれ!とまだ決められなくて、それも課題。
しかし描きたいっ、と思った時に描きたいものをアウトプットしたほうが良いのだろうなあと今のところは思っています。
課題山積ですな。
なんせアナログで描き始めてまだ一年にもなりませんから。


一週間の展示が終わって家に着いたとき、涙が溢れてどうしようもありませんでした。
約三ヶ月の色んな思い出や気持ちがぶわっとあふれてきたのです。
何よりも、励まし、助けてくれた友人たち。
支えてくれた家族。
私はなんて恵まれているんだろう。

がんばろう。たくさん描こう!

ていうか描く以外無いな。だって描かずにおれないんだもの。

これからもどうぞ見守ってやってください。


ありがとうございました。たくさんの方々に感謝。