2014年6月29日日曜日

もげた蝶々

わたしは午前に読書をしていた。
部屋の中に居るよりも外の木陰のほうが涼しそうな気がしたので、「木陰で読書をする」
という貴婦人のような真似をやってみようと試みた。
海風がよく通り、案の定木陰は室内に居るより幾らか涼しい気がした。
しかし5分と経たないうちに読んでいた本の活字の上に小さな点々のしみがぶわと浮いた。
小雨が降りはじめたのだ。
梅雨が明けても天気は安定しない。
カッと晴れた空に突然雷雲が広がったりする。
その時は大降りにならずすぐに晴れ上がったのだが、「木陰で読書」の気分は削がれた。
渋々家の中に入ろうと玄関前に戻ると
ひらひらしたものが地べたに落ちてきた。
ひらしらしたものはアゲハ蝶だった。
アゲハ蝶が地べたの上を這っている。
よく見ると、片方の羽根が半分もげている。
天敵にやられたか
蝶々は飛び上がろうとするがよれよれと頼りない。
背の低い日々草などにとまってはじっとしたりまた飛び上がったが木陰のすみれの葉の群生の上に落ちた。その上を這っていた。
羽ばたきもだんだんゆっくりになってきた。 
わたしはじいっと方羽のもげたアゲハ蝶をみつめていた。


ここでしぬのかな

と思った。


ここでしんで、ありにくわれて、ありのふんがばくてりあにぶんかいされて、つちのようぶんになるのかな

と思った。


ここで、ゆっくり、しになよ

と思った。

途端、

アゲハ蝶はぶわっと家の垣根よりも高く舞い上がり、 晴れ上がった空に吸い込まれる様に私の視界から去って行った。

私は空を見ながら半ば呆然となっていた。
再び蝶々が飛び上がれた事に対しての喜びを微塵も感じていなかった。
ただ、自分の中の残酷さを何度もなんども見つめていた。

何度も何度も。



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